- 2025/03/07 12:23
防御率は運に左右されやすい?
ピッチャーの能力をあらわす指標として、もっともよく知られるのが防御率だ。防御率は「そのピッチャーの9イニングあたりの平均自責点」であり、数値が低いほど優秀とされる。
しかし、セイバーメトリクスが発展するにつれ、防御率はピッチャーの能力を推し量る指標として不完全であることがわかった。防御率は「ピッチャーがコントロールできない要素」の影響を強く受けているからだ。
フェアゾーンに飛んだ打球がヒットになる確率を「BABIP(Batting Average on Balls In Play)」という。実は、「BABIP」はどんなピッチャーでも3割前後に収束する傾向にある。
セイバーメトリクス研究家のトム・タンゴ氏は、「BABIP」を構成する要素として、運が44%、ピッチャーの能力が28%、守備が17%、球場の特性が11%であると結論づけた。すなわち、本塁打以外のヒットが生まれる要因のうち、約7割が「ピッチャーがコントロールできない要素」に依存しているということだ。
ピッチャーがコントロールできる要素のみを反映した「FIP」
そこで誕生したのが「FIP」だ。「Fielding Independent Pitching」の頭文字をとったもので、ピッチャーがコントロールできる「奪三振」「与四球」「被本塁打」の3項目から計算されている。
FIPは各項目の得点価値をもとに算出される。得点価値とは、そのプレーによってもたらされる(または減少する)平均得点のこと。
データサイト「ファングラフス」によると、2024年のメジャーリーグでは、四球は「0.69」点、本塁打は「2.05」点の得点価値が記録された。三振の得点価値は同サイトでは確認できなかったが、一般的に「-0.3」点前後と考えられている。
そのシーズンの得点価値と3項目を組み合わせ、投球回、補正値などを含め計算することでFIPが導かれる。
もっとも優れた日本人ピッチャーは菊池雄星
2024年にメジャーリーグで登板した日本人ピッチャーのFIPは以下の通りだ。「E-F」は防御率(ERA)とFIPの差で、これがプラスであるほど、そのピッチャーは防御率よりも優れていることになる。
| 所属 | 防御率 | FIP | E-F | |
| 山本由伸 | LAD | 3.00 | 2.61 | 0.39 |
| 菊池雄星 | TOR & HOU | 4.05 | 3.46 | 0.59 |
| 今永昇太 | CHC | 2.91 | 3.72 | – 0.81 |
| 松井裕樹 | SD | 3.73 | 3.92 | – 0.19 |
| ダルビッシュ有 | SD | 3.31 | 4.08 | – 0.77 |
防御率よりも優秀なFIPを示したのは、山本と菊池だった。特に、メジャー6年目の菊池はキャリアハイの206奪三振をマーク。奪三振割合は28.0%で、与四球割合はキャリアハイの6.0%だった。トータルで736人の打者と対戦し、許した本塁打は25本のみ。HR%(被本塁打割合)は3.4%となり、キャリアで2番目に低い数字となった。
三振を多く奪い、バツグン制球力を誇る菊池の真髄が、FIPに反映されているのだ。