日本一わかりやすい「FIP」のしくみ 山本由伸と菊池雄星は「防御率」よりも優れた投手

防御率は運に左右されやすい?

 ピッチャーの能力をあらわす指標として、もっともよく知られるのが防御率だ。防御率は「そのピッチャーの9イニングあたりの平均自責点」であり、数値が低いほど優秀とされる。

 しかし、セイバーメトリクスが発展するにつれ、防御率はピッチャーの能力を推し量る指標として不完全であることがわかった。防御率は「ピッチャーがコントロールできない要素」の影響を強く受けているからだ。

 フェアゾーンに飛んだ打球がヒットになる確率を「BABIP(Batting Average on Balls In Play)」という。実は、「BABIP」はどんなピッチャーでも3割前後に収束する傾向にある。

 セイバーメトリクス研究家のトム・タンゴ氏は、「BABIP」を構成する要素として、運が44%、ピッチャーの能力が28%、守備が17%、球場の特性が11%であると結論づけた。すなわち、本塁打以外のヒットが生まれる要因のうち、約7割が「ピッチャーがコントロールできない要素」に依存しているということだ。

ピッチャーがコントロールできる要素のみを反映した「FIP」

 そこで誕生したのが「FIP」だ。「Fielding Independent Pitching」の頭文字をとったもので、ピッチャーがコントロールできる「奪三振」「与四球」「被本塁打」の3項目から計算されている。

 FIPは各項目の得点価値をもとに算出される。得点価値とは、そのプレーによってもたらされる(または減少する)平均得点のこと。

 データサイト「ファングラフス」によると、2024年のメジャーリーグでは、四球は「0.69」点、本塁打は「2.05」点の得点価値が記録された。三振の得点価値は同サイトでは確認できなかったが、一般的に「-0.3」点前後と考えられている。

 そのシーズンの得点価値と3項目を組み合わせ、投球回、補正値などを含め計算することでFIPが導かれる。

もっとも優れた日本人ピッチャーは菊池雄星

 2024年にメジャーリーグで登板した日本人ピッチャーのFIPは以下の通りだ。「E-F」は防御率(ERA)とFIPの差で、これがプラスであるほど、そのピッチャーは防御率よりも優れていることになる。

所属防御率FIPE-F
山本由伸LAD3.002.610.39
菊池雄星TOR & HOU4.053.460.59
今永昇太CHC2.913.72– 0.81
松井裕樹SD3.733.92– 0.19
ダルビッシュ有SD3.314.08– 0.77

 防御率よりも優秀なFIPを示したのは、山本と菊池だった。特に、メジャー6年目の菊池はキャリアハイの206奪三振をマーク。奪三振割合は28.0%で、与四球割合はキャリアハイの6.0%だった。トータルで736人の打者と対戦し、許した本塁打は25本のみ。HR%(被本塁打割合)は3.4%となり、キャリアで2番目に低い数字となった。

 三振を多く奪い、バツグン制球力を誇る菊池の真髄が、FIPに反映されているのだ。